兄と姉の秘密

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兄さんはストを決行する。地球規模の気候変動問題に対して誰かが行動を起こさなければ。国のエネルギー政策なんてあてにならないから、膝を抱えて縮こまる。パン生地の薄いあんパン、見た目以上にずっしりとしたあのイメージ。ゆっくりと息を吐きながら首を折る。限りなく小さな玉となれば余りにもずっしり。空間が歪む。時間が遅れはじめた。
「あんた、またこんなことして」
姉さんの声がする。手が伸びる。近づいてはダメなのに。そんなことするから、指が伸びる、腕が伸びる、渦を巻いてグングン伸びる。光の速さで巻きついて、その手は凍てついた。
「そして、姉さんは兄さんを抱いたまま冷蔵庫の中へ引き込んだ」
俺は熱くて酒臭い親父と布団に潜り、そんな話しを聞かされながら眠った。だから俺には兄姉がいないんだって。
時は流れた。
「最期にもう一度言うぞ。決して開けてはいけない」
れいぞうこのことだ。父は母を追うようにして死んだ。
SF
公開:19/05/24 21:42
更新:19/05/24 21:48

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
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