言弾

その部屋は酷い異臭に包まれていた。換気が全くされておらず、長時間滞在すると体調が悪くなりそうだ。

狭く古いその部屋を、既に腐敗が進んでいる住民が出迎えた。
彼の目の前には電源に繋がれたままのパソコンが、そして左胸には小さな穴がいくつも空いており、いわゆるハチノス状態にされていた。

だが、この事件には一つだけおかしな部分がある。血痕がどこにもないのだ。
いや、血痕と思わしきものはあったのだが、それはパソコンの画面の中にあったため、我々が触れることはできなかった。


そして昨日、ウイルスと判断された血痕は除去され、安全な状態となったパソコンは我々が調査することになり、私はその光景に目を疑った。

彼が最期に閲覧していたサイトは不特定多数が書き込める掲示板、そこには彼に対する罵倒や暴言が大量に書き込まれていた。
彼はそのマシンガンのような言葉の弾丸に撃ち殺されていたのだ━━。