B品

10
12

「らっしゃい、らっしゃーい!今日はごぼうだ、間違いない!お待ちかねのB品入ってるよー!」

八百屋さんの大声に、わらわらと人が集まってくる。B品って?普通のごぼうとそんなに変わらなそうだけど…。

「ほかのは良くてHB、大体はH品だよ!でも、うちのは最低でもB!だから柔らかさが違う。お年寄りにはぴったりだ!」

ああ、鉛筆か。冷静に話を聞きつつも、心は大きく揺れ動いていた。

数ヶ月前、同居しているお義母さんに言われた。きんぴらなんて当てつけのつもりかい?あとで夫に聞くと、最近かたい野菜を食べるのがしんどいらしい。だからってそんな言い方…。それ以来、胸のつかえが取れずにいたのだ。

値ははったが、味はたしかだった。

久しぶりのきんぴらを、お義母さんは予想以上に喜んでくれた。また食べたいもんだねえ。私は笑顔で頷いたものの、内心複雑だった。

さすが6B。いくら洗っても、指先が真っ黒なまま。
その他
公開:19/05/21 20:54

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容