うえはら

最初はシマウマだった。
次はキリン。そのあとはハゲトキ、ベニイロフラミンゴと羽根モノが続き、今はコビトカバの担当だ。
出世だねと言われるけれど、いち飼育員の自分にはよくわからない。
繁殖に関わったこともある。死なせてしまったこともある。私のせいではないのかもしれないけれど、もう少し何かできたのではないか、そんな思いがある。
毎日を丁寧に、目の前の動物との縁に感謝しながら、コツコツと生きることを手伝いたい。
私には夢がある。
この園で一番人気のある「上原」を担当することだ。
「上原」は同じ中学の先輩。つまり人だ。
上原先輩は少し変わった人で、中学を出ると、夢のためにこの動物園と契約をした。
先輩の夢は積み上げたポテトチップスで月に行くこと。
夢を果たすために、進学や就職を捨てて、もう２８年、今日も柵の中でポテチを積んでいる。
柵の前には天体望遠鏡。
担当になればきっと会える。会いたいよ先輩。