欲しかった言葉

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私の名はスナオ。ひねくれている。
同級生の多くがサッカーに夢中だから相撲をはじめた。
食べに食べて四股を踏み、学生相撲から角界入りして大関になった。二場所連続で優勝を果たし、横綱に推挙確実というタイミングで引退を発表した。
「Jリーガーになりたい」
皆がズッコケた。翌日のスポーツ紙の一面は「うそーん」だった。いまさら。その体で。何を考えているのか。親方や後援会の面々は、どこか遠くを見るように私を避けた。
「勝手ね」
おかみさんの言葉に泣いた。
食事が喉を通らず、部屋に居づらくなり、ホテルを転々とした。マスコミに追われ、世間に責められ、痩せるばかり。髪をドレッドにしたが、これがひどく似合わない。
うなだれた私に同級生の、今は蕎麦屋のヒネオが、うどんで作ったサッカボールをくれた。
ばーかと一言。相変わらずだ。
それから私はヒネオの店でうどんを踏みながら、書道家になった。
ばーか。
あぁ最高だ。
公開:19/05/21 11:40
更新:19/05/21 16:15

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