チェンジ!

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「あ~あ。超実力派イケ面俳優の栗谷智雄と入れ替わらないかなぁ」
 と鼻ホジしながらゴロゴロしていたら、晴れた空に雷が鳴って、「オッケー! 入れ替え一丁!」という声がした。
 気がつくと俺は、舞台稽古の真っ最中だった。当然台詞も何も覚えてない。演出家からの罵詈雑言。始めは励ましてくれていた共演者も段々と、「きっと、どこか悪いんだよ」と腫れ物にでも触るかのように… 仕事は激減し、栗谷智雄は事実上引退。なのに元俺(中身「栗谷」)が、「稀代のバイプレーヤー」としてデビューしやがった。
「ちげぇ~よ神様。あいつの経験や知識や記憶とかそのまんまじゃなきゃ無理に決まってんじゃねえか。神様。頼むから、そういうふうに、超売れっ子俳優になった今の俺と、入れ替えてくれっ!」
 晴れた空に雷が鳴って、「オッケー! ラストオーダーね」という声がした。

 だが俺は、その後もずっと、忘れ去られた栗谷智雄のままだった。
ミステリー・推理
公開:19/05/21 09:48

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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