釣り人

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漆黒の空間。そこに敷き詰められた星屑は何億個、いや、それ以上か。

『天の川』と、青い星、地球の住人は呼んでいる。川…なのは、あながち間違いではないかもしれない。だって俺はここに船を浮かべ、釣糸を垂らしているのだから。

今地球は夜を迎えてる。こちら側から見る地球はずーっと夜だ。しかし地球の自転で、こちらからはポツポツした「電気の光」が暗闇で主張し、少しずつ位置を変えるように見える。まるで星座だ。地上から星を見るのと変わらない。

そこでこの釣糸の出番。夜側の地球に垂らし、住人の夢を釣る。

活きのいい夢は釣り上げる前に逃げ、他の夢に入りこむことがある。昨日は悪夢を逃がしてしまったから、他の人に可哀想なことをした。

釣った夢はどうするのか?もちろんサンプルにする。今は地球に近づくことはできないが、住人の脳内をこうして垣間見る。そしてこの青い星の征服に貢献することが、俺に課せられた任務だ。
SF
公開:19/05/22 20:18
更新:19/05/23 06:25

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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