変更線（ⅰ）

踏み切りで電車待ちの間、遮断機の黄・黒が逆転してる。今日は電柱の標識板も変わってる。助手席の三川の頭を小突く。
「下らねぇ事すんな」
「練習だ、練習。固い事言うな」
バーが上がる頃には元に戻る。３０秒しか持続せず、同じ対象は２回変えれない。車の進行に従い、ガードレール、横断歩道、車道の中央線が逆転していく。気付いた人間がいたとしても、３０秒後には見間違いだと思う。何が楽しくて、何の練習なのか、大いに謎。

三川はＥＳＰ（能力者）だ。区分はＰＫ（念動力）だろうけど、見てる分には催眠術か幻視。境界を接する面積と組成の近い平行線（つまりボーダー）の配列を逆転する。対応可能なのは２種類まで。限界時間が３０秒。正直、暇潰し以外の役に立たない。『タイプＡ－ｈａ』とか、『シマシマ』とか本人は呼ぶ。
「線は地球を救う！なんちゃって」
三川が俺の股間に横眼をやる。
無駄だ三川。このパンツは、前被害に遭った。