転手古舞(てんてこまい)-上

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「字が違う」
毎度ながら目ざとい。で、細かい。
「仰天って言うでしょ。転じゃなくて天」
「確か、語源も別だよな」
「……知ってるわよそれくらい」
睨んだ端でこっそり調べる。その辺ちょっと可愛い。

手古舞:祭で神輿前を練り歩く、男装の女性。
天手古舞:慌て騒ぐさま。てんてこは太鼓の音より。
手古舞。転・手古舞。ある意味正しいと思う。

おわら風の盆。うちの県が誇る祭りだ。毎年9月1日から3日、町はおわら一色に染まる。観客動員数が約25万人。その3日間の為、俺達は1年越しで準備に追われる。
去年まで、女踊りじゃ一番だった。踊れなくなるから結婚しないって、散々ごねたのを口説き落とした。
地区ごとに街流しや舞台で競う。正直威信が懸かってる。どうせ上限25歳、あと2年待てって皆にも止められた。
人に見せるのが惜しくなった。待つ間に取られない自信もなかった。
だから俺は、彼女から女衣装を取り上げた。
青春
公開:19/05/19 12:18
富山・八尾『おわら風の盆』

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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