真実への一輪

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「証人もおらぬではありませんか」
北町奉行遠山景元が越後屋の主を無言で見据えた。下手人はこの男に間違いない。が、証人がいない。
「そこでしばらく待っておれ」
そう言い残し、奉行は白洲から奥の部屋へと消えた。

奉行は控えていた彫り物師に「頼む」と一言。裃を脱ぐと見事な桜吹雪の入れ墨が現れた。彫り物師が背中に桜を一輪咲かせた。すると、霞むように奉行の姿が消え、瞬く間に再び姿を現した。
「なるほどな…」
過去に遡り証拠を掴んだのだ。

奉行は白洲へ戻り越後屋を睨んだ。
「証人はいる」
「まさか…」
「遊び人の金公が全てを見ていたそうだな」
「あいつは背中に入れ墨のあるとんでもない極悪人。そんな奴の言う事など…」
「ええい、黙れ黙れ!」
奉行が片肌を脱いだ。
「この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねえぜ!」

過去へ遡る度に桜が一輪。

遠山景元が北町奉行を退く時、全身に桜が咲き誇っていたそうな。
ファンタジー
公開:19/05/18 23:55
スクー 全身入れ墨タイムスリップ 遠山の金さん

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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