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全ての苦しみや憎しみから解放されたい一心で、私は、臆病な薬を常服するようになった。
確かに、時折、神経に痺れがみられるが、それ以外の特別な症状はみられなかった。
私は、常に涎を垂らしながら、建物の壁に身体を寄せ付けて、いつ倒れてもおかしくない格好で、歩み進んでいた。
薬の効果がきれれると禁断症状からか、悪し空想をよく見た。
私は、急いで、穴のあいたポケットから三錠ばかりカプセルを取り出し、それを水を使わずに飲み込んだ。
私は、血反吐を吐き、汚れた口元を袖で拭った。
すると、遠くのほうから聖歌がきこえてきた。恐らく、近隣から訪れた聖歌隊の歌声であろう・・・
私は、レンガの建物の壁に背中をつけ、座り込み、聖歌を暫くきいた。
いつのまにか、目元は涙を含んでいた。
「こうなるつもりはさらさらなかった・・・」
私はこの時こそ空想に出逢いたいと思ったが、聖歌はそれを赦してはくれなかった。
その他
公開:19/05/20 22:20
更新:19/05/20 22:24

神代博志( グスク )









 

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