殺人の動機

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「被害者の写真を見せてくれ」
警部は、部下から手渡された12枚の写真を見て、
「容疑者と被害者の接点はあるのか」
「容疑者は12人目の殺害現場で現行犯逮捕、氏名は不明、被害者との接点は不明、被害者同士の共通点も不明です」
 警部は頷いて取調室に入り、容疑者を見つめた。警部は、容疑者の双眸に得体の知れない異様さを感じた。容疑者の男は、
「今に分かる」
と、呟いて口を閉ざした。そこへ白衣の男が、警部を外に呼び出した。
「警部、お話が…」
取調室を出た警部に、白衣の鑑識官が一枚の書類を手渡した。
「被害者の共通点が判明しました」
「そんな…血縁関係もない被害者12人全員のDNAが一致するとは…」
 容疑者は「今に分かる」と言った。何が分かる、と言うのだ…警部は取調室に戻り、再び容疑者と対峙した。だが、警部の目が捉えた容疑者の双眸は、虚ろに無表情なもので、そこからは何も読み取ることはできなかった。
SF
公開:19/05/20 21:34

黒柴田マリ( ヨコハマ )

黒柴田マリと申します。ショートショート、大好きです。あと、リンゴも大好きです。

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