熱血パパの海苔弁

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「ぬぅあんだとお!ぬぁんてことをしたんだあ!」
パパが一段と恐い顔になり僕を叱った。ヒロ君からお弁当のおかずをせしめたことがバレたのだ。
いつもとは比べ物にならないくらいの迫力と暑苦しさだ。
「さんきち、これを見なさい……」
ゲンコツを覚悟していた僕が目を開けると、さっきまでが嘘みたいに優しい顔のパパがいた。
「それはな、貧乏なうえに男手一つでおまえを育てることになったパパの責任でもある。さあ、これが今作れる精一杯のお弁当だ。ここからヒロ君にせしめた分を返しなさい」

「と言っても海苔が一枚、いや三枚か……いいよ、食べなよ」
そう言うとヒロ君は、お弁当箱と蓋をそのまま僕に返した。
家に帰ってパパにそのことを話すと、優しい顔で「そうか」とだけ言った。
そして蓋の裏に貼り付いていた二枚の太眉を剥がすと、元の位置に貼り直した。
ファンタジー
公開:19/05/20 17:55
更新:19/05/20 20:40

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