「つま」

家電量販店の入口に行列ができていた。
並んでいるのは心なしか疲れた表情を浮かべた男性ばかり。

「この行列は何ですか？」
「つまようじ行列さ」
「つまようじ？」
「知らないのか？」
「歯に挟まったものを取る？」
「それはただの爪楊枝。ここに並んでいるのは、みんな既婚者なんだ。それがヒントさ」
「ははーん。奥さんのおつかい、ですね？」
「そう、妻の用事で……って、つまらんこと言わせるな！」
「キレ芸ですか？」
「つまみ出すぞ！」
「ダジャレですか？」
「まぁ、ある意味あたっているけどな」
「つまり？」
「今日は癒しのつまようじの発売日なのさ」
「癒し……」
「それを嫁さんの頭に刺すとだな……」
「刺すと？」
「幼児化するんだ！」
「なんと！」
「かなり世話が焼けるけど、効果は一日だからね。幼児化した嫁さんは可愛いものだよ」

ここに並んでいる方々は普段……。
つまはじきにされているのだろう。