あるなつの思い出

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はみ出た真っ赤な口紅を直しもせずにりんご飴を頬張るなつ。あまりにも艶やかな唇。色気と裏腹な無邪気さが僕を翻弄させた。盆に田舎へ帰省して2日目。幼馴染のなつとは2年ぶりの再会だった。お互い20歳。近所の祭りに一緒に出かけたはいいが、浴衣姿でしかも化粧したなつを見たのは初めてで、僕はすっかりどぎまぎしていた。なつは何も変わらない様子で、僕に齧ったりんご飴を一口どう?と勧めてくる。
なつの唇はりんご飴のせいで赤く染まり続ける。
「おい、そんなに近づいたら俺に何されるかわからないぞ!」
笑いながら冷やかしたけど、半分本気だった。
「何男ぶってるのよ、襲えるもんなら襲ってみなさいよ。」


なつも半分本気だったらいいのに。

真っ暗な夜空に花火が咲いた。
僕はなつのはみ出た口紅を拭ってキスをした。

りんご飴の甘い味。
口紅と飴の滑りを反芻する。

今日はなつの命日だ。

花火が散った。
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公開:19/08/08 21:52
更新:19/11/04 20:18

夜野 るこ

  夜野 るこ と申します。
(よるの)

皆さんの心に残るようなお話を書くことが目標です。よろしくお願いします。

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