夏の守り神

5
7

 夏だ! 海だ! BBQだ!

 ……というのに、俺は神社で留守番をしている。
 別に誰も来やしないのに、「この場所は鬼門で邪気がうんたらかんたら」とかで、人がいないとダメらしい。

「お前たちはいいよなあ、泳いで、飯食って……気楽そうで」
 鯉にエサをやりながら、一人ぼやく。
「ったく、何も起こらないって……お?」
 
 鳥居の方を見ると、おばあさんらしき人が歩いてきた。
 ちょうどその境界線を越えた瞬間……火花が散った。
 
「え!?」

 おばあさん、だったものが吹き飛ばされる。見ると、その頭にはツノが生えていた。
 
 瞬間、急に池から巨大な影が飛び出した。なんだ? 鯉だ!
 鯉は気球のように膨らむと、その元おばあさんの鬼をまるまると飲み込んだ。
 
 ごっくん。げふっ。

 鬼を消化し終えると、また元のサイズに戻った。

「……すいませんでした」
 俺は謝らずにはいられなかった。
公開:19/08/09 20:36

やぎ太郎( 牧場 )

紙ではなく文字を食べて吐き出すヤギです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容