ブラウン氏の冥界奇行_(8)

「静粛に！」
気が付くと、ブラウンはどこかの部屋の中にいた。
「ここは、法廷か？」
ブラウンを囲むように半円状にびっしりと席が並べられ、
そこに法服を着た者達が、ブラウンを突き刺すような視線で眺めている。
彼らの背中には、白または黒の翼が生え、あるものは頭に輪っか。またあるものは角を生やしている。
だが、ブラウンが仰天したのは彼らの姿などではなかった。
ブラウンの正面にたたずんでいる裁判長と書かれたプレートの巨大な席、
そこに巨木のようにどっしりとした体をあずけているのは巨大な天使であった。
純白のガウンを羽織ったそれは孔雀のような羽を両側に伸ばしている。
よく見ると、羽の模様と思ったものは無数の目だった。

「まさか……アズライール」
生と死をつかさどり、羽に全ての人間の目を持つ天使。
人が死ぬたびのその目が閉じる。と言われる。

ブラウンは冥府の法廷でこれから裁かれるのだ。