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結婚式の二次会で、花嫁になった友人と写真を撮っていた時だ。
彼女が壁を見て眉を潜めた。そこには花を生けていない花瓶があった。
「いやね。店員さん、忘れてるのね」と私が言うと、彼女は「ちょっと嫌なこと思い出して……」と言葉を濁した。
よかったら聞くよ? と水を向けると、彼女は幼稚園の頃のことを話し始めた。
「家にやたらと花瓶が飾ってあったの。花瓶そのものを楽しむ花瓶。それがやたらと倒れたの。水なんて入れてない筈なのに、辺りがびしょびしょになって。父は母を怒鳴った。母は私を怒鳴った。つらかったな……
本当はね、母が私に命令してたの。でも母は『私がいつ命令した!』って怒るの。だから私、『別のお母さんに命令された!』って言い返した。信じてもらえなかったけどね」
「おかしな話ね」
彼女はウエイターの盆からグラスを取って、一息で飲み干した。
「今日、出席してた母が『別のお母さん』なんだ」
彼女が壁を見て眉を潜めた。そこには花を生けていない花瓶があった。
「いやね。店員さん、忘れてるのね」と私が言うと、彼女は「ちょっと嫌なこと思い出して……」と言葉を濁した。
よかったら聞くよ? と水を向けると、彼女は幼稚園の頃のことを話し始めた。
「家にやたらと花瓶が飾ってあったの。花瓶そのものを楽しむ花瓶。それがやたらと倒れたの。水なんて入れてない筈なのに、辺りがびしょびしょになって。父は母を怒鳴った。母は私を怒鳴った。つらかったな……
本当はね、母が私に命令してたの。でも母は『私がいつ命令した!』って怒るの。だから私、『別のお母さんに命令された!』って言い返した。信じてもらえなかったけどね」
「おかしな話ね」
彼女はウエイターの盆からグラスを取って、一息で飲み干した。
「今日、出席してた母が『別のお母さん』なんだ」
ミステリー・推理
公開:19/08/07 17:42
更新:19/08/07 18:06
更新:19/08/07 18:06
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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