館林祐介
8
11
くまがや、まえばし、たーじみ。
ふかや、みのかも、ねーりま。
よりい、いせざき、きょーと。
離婚すると息巻いて、明け方にやってきた妹が、うだる暑さのベランダで、ぼんやりと最高気温ランキングを口ずさんでいる。
「飽きた」
「ゆうすけくんのこと?」
「夏よ」
「あぁ」
「暑いの飽きた」
「もう帰んなよ」
「やだ」
「いいじゃんキスぐらい」
「キスははじまりなんだから、だから許さない」
「なにそれ」
「あのね、汗が流れてないのに、いつのまにか肌がじっとりしてる感じなの」
「んー、よくわかんない」
「少しずつ、少しずつ、じっとりと嫌いになったの。もううんざり」
「ゆーすけあげたら?」
「なにそれ」
「ゆーすけあげたら、ゆーすけあげたら、ゆるしてあげたら」
「もう、あっつい」
そう言うと、妹は泣き出した。
私はキッチンで、妹が泣き止むまでかき氷をかき続けた。
すべて水に流れたのは、陽が落ちてからだ。
ふかや、みのかも、ねーりま。
よりい、いせざき、きょーと。
離婚すると息巻いて、明け方にやってきた妹が、うだる暑さのベランダで、ぼんやりと最高気温ランキングを口ずさんでいる。
「飽きた」
「ゆうすけくんのこと?」
「夏よ」
「あぁ」
「暑いの飽きた」
「もう帰んなよ」
「やだ」
「いいじゃんキスぐらい」
「キスははじまりなんだから、だから許さない」
「なにそれ」
「あのね、汗が流れてないのに、いつのまにか肌がじっとりしてる感じなの」
「んー、よくわかんない」
「少しずつ、少しずつ、じっとりと嫌いになったの。もううんざり」
「ゆーすけあげたら?」
「なにそれ」
「ゆーすけあげたら、ゆーすけあげたら、ゆるしてあげたら」
「もう、あっつい」
そう言うと、妹は泣き出した。
私はキッチンで、妹が泣き止むまでかき氷をかき続けた。
すべて水に流れたのは、陽が落ちてからだ。
公開:19/08/07 10:15
ログインするとコメントを投稿できます