井戸の中
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我が家の庭には井戸がある。
ある夏の日、庭で遊んでいた妻と娘が「井戸から変な音がしている」と私に言ってきた。気のせいだろう、と私は井戸に近付き、耳をすましてみた。
『う………………しょ………………、……ぁれ?』
そう聞こえた。しわがれた声だ。「嘘、あれ?」と言いたいのだろうか?
中に誰か潜んでいるのか? と、私は井戸の中を覗き込んだ。
『うしろのしょうねん、だぁれ?』
今度はハッキリ聞こえた。
うしろの、しょうねん?
私は跳ねるように振り返った。そこには誰もいなかった。
なんだ、と息をはいた瞬間、後ろ髪を引っ張られた気がした。思わず「グェッ」と声が漏れる。
『だぁれだ?』
耳元に生暖かい息がかかり、視界を閉ざされた。その目元には、ぬめっとした感触。
私は幼き頃、この井戸へ蛙を放り投げて遊んでいた事を思い出した。
返答できずにいた私は、ひっくり返るように井戸の中へと吸い込まれた。
ある夏の日、庭で遊んでいた妻と娘が「井戸から変な音がしている」と私に言ってきた。気のせいだろう、と私は井戸に近付き、耳をすましてみた。
『う………………しょ………………、……ぁれ?』
そう聞こえた。しわがれた声だ。「嘘、あれ?」と言いたいのだろうか?
中に誰か潜んでいるのか? と、私は井戸の中を覗き込んだ。
『うしろのしょうねん、だぁれ?』
今度はハッキリ聞こえた。
うしろの、しょうねん?
私は跳ねるように振り返った。そこには誰もいなかった。
なんだ、と息をはいた瞬間、後ろ髪を引っ張られた気がした。思わず「グェッ」と声が漏れる。
『だぁれだ?』
耳元に生暖かい息がかかり、視界を閉ざされた。その目元には、ぬめっとした感触。
私は幼き頃、この井戸へ蛙を放り投げて遊んでいた事を思い出した。
返答できずにいた私は、ひっくり返るように井戸の中へと吸い込まれた。
ホラー
公開:19/08/06 23:58
更新:19/08/07 01:26
更新:19/08/07 01:26
まったり。
2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)
壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)
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