蚊

今日は彼女と久しぶりのデートだってのに寝坊した！
彼女、絶対に怒ってるぞ…僕は急いで待ち合わせ場所に向かった。
「遅れてごめん！」
到着するや否や、僕はすぐに謝った。
彼女は僕の右頬を引っ叩いた。やっぱり…凄く怒っている…
「ごめん！今、君の頬に蚊が止まっていたから…」
彼女は叩いた蚊を見せてきた。良かった…怒っているわけじゃないんだ…
「もう、事故にでも遭ったんじゃないかって心配したんだから」
不安そうにする彼女に申し訳なくなった。僕は謝った。彼女に左頬を叩かれた。
「ごめん！また蚊がいたから…」
潰した蚊を見せてくる。いいよいいよ。むしろありがとうだよ。
僕は今日、彼女に２０回も叩かれた。今日はやけに蚊が多いんだな。

『どうです？このどう見ても潰した蚊にしか見えないシール。これがあれば大義名分を得て相手を殴ることが出来ます』

彼女がこのシールを大量に購入していたことを僕は知らない。