扇風機の間違った使い方

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「――あー、暑い!」

 俺は必死に団扇を扇いだ。しかし、それでも蒸発が間に合わないほどに、身体中から汗がダラダラと流れてくる。今年の夏の暑さは異常だ。外から聞こえてくるセミの声も悲鳴を上げているようだ。

 こうも暑いと仕事が捗らない。誰か代わりに団扇を扇いでくれないものか。俺は部屋の中を見渡した。

 そうは言っても、一人しか居ないこの家に、そんな都合のいい奴は……いた。部屋の隅で埃を被り、虚しくこうべを垂れている扇風機だ。

 さっそく俺は扇風機を引っ張り出して、埃をはらう。そいつの後ろに団扇を貼り付け、首振りにしてスイッチオン!

 これで扇風機が首を振るたびに、団扇の風が来るはずだ!こんな名案を思いついてしまう自分の発想力が怖い。

 しかし現実は非情。扇風機のノロマな首振りではそよ風ほどの風もおこせやしない。落胆する俺をよそに、扇風機は虚空に風を送り続けていた。
その他
公開:19/08/05 18:42
更新:19/08/05 23:32

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