モノ語り

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私は幽霊である、はずである。

不慮の事故だった。自分の葬式も見た。家族が泣いていた。申し訳ないと思った。でもそこから先…、何をすることもできなかった。

はじめは単純に、幽霊になったのだ、と思った。でも、誰も私に気づかなかった。必死に驚かそうとしても無駄だった。霊媒師すら私の気配を無視した。目の前にはただ、私のいない世界だけがあった。

未発見の新星は、存在すると言えるのだろうか。そんなことを思ったりもした。

私が私であるためには他者が必要だった。想像なんかでは足りない。想い出でも駄目だ。いまの私を、ダイレクトに感じてもらわなければ。

「最近、いやに似てきたな」

起き抜けの息子が、鏡を見ながら頬をさすっている。たしかにな…と私も一緒になって鏡を覗き込むと、頬に何十年ぶりの確かな温もり。

思わずこみ上げてきた熱いものを、息子は欠伸とともに、ざぶざぶと洗い流した。
ファンタジー
公開:19/08/05 16:51

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