夕立過ぎて

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突然の激しい夕立。僕はずぶ濡れになりながら公衆トイレに駆け込んだ。
「参ったな」
頭から水浸しだ。
耳をつんざくような雨音。暫くはここから動けそうになかった。
無為な時間が過ぎていく。雨は益々激しく、いつやむともしれなかった。
「仕事辞めよっかな」
ぼそりと呟く。
いつまでたっても成績は下の下だし、上司には叱られてばかりだし、雨はやまないし。
「はぁ」
憂鬱な気分に肩を落とす。雨は素っ気なく降り続けた。
どれくらいの時間が過ぎただろう。
ふと、空を見上げる。
「あ」
いつしか雨はやみ、空を覆う雲の隙間から、何本もの光が差し込んでいた。
薄明光線。
ぼーっと、幻想的な光景に見入っていた僕は、クスっと肩を揺らした。
まったく、こんなことで。
気が付けばわだかまりは、きれいさっぱりなくなっていた。
「さてと」
ぐっと胸を張り、光差す空の下歩き出す。
水に溶ける服も、きれいさっぱりなくなっていた。
その他
公開:19/08/06 19:00

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