青春飲料

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梅雨が明け、真夏がやってきた。
水分を補給するため、自動販売機に近づいてみれば『新発売! 青春の炭酸水』とあった。
どんな味だろう? と思い、試しに購入してみた。
自動販売機から出てきた商品を見ると、外見はペットボトル製のラムネにそっくりだった。
一口飲んでみると、心身に爽やかな炭酸水が沁みわたり、周りの景色が急に変わった。
これは、高校球児だったおれが三年生最後の夏、全国大会の初戦でマウンドに上がった甲子園球場だ。
二対一でリードし、九回を抑えれば勝利というところで、二死から力んで四球を出し、次の打者に本塁打されてサヨナラ負けを喫した。
あのときの苦い経験がきっかけで野球をやめてしまったが、今は挫折から立ち直り、青春の良い思い出になっている。
「ウゥーーーー~~」
飲み終わると、どこからか甲子園球場のサイレンが聞こえてきた。
高校球児の聖地では、今夏も白球を追いかける熱い試合が開幕する。
青春
公開:19/08/04 15:47
更新:19/08/04 19:50
炭酸水 自動販売機 高校野球 甲子園

山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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