12
14
お盆も近いのでお墓の掃除をしていました。すると、墓石のてっぺんで、鮮やかな黄緑色の蟷螂が、じっと空を見ています。私は、「うちのお墓は蟷螂の足の下にあるんだな」と思い、愉快でした。
そこへ一匹のアシナガバチがやってきて、父の卒塔婆にとまりました。私は、「巣を作られたら困るな」と思い、お墓を一回りしてみました。巣はありませんでした。でも、アシナガバチは父の卒塔婆の上をゆっくりと這い回り、しきりと顎を動かしています。
ハチは、卒塔婆の表面を顎でこそげ取って繊維を集めているようです。改めて卒塔婆を見ると、部分的に表面が毛羽立ったようになっていて、父の戒名も削れたようになっていました。
「巣を作るために、繊維を取りに来ていたのか」
アシナガバチが飛んでいきます。
「あの先に、父の戒名が編みこまれたアシナガバチの巣があるんだ…」
思い出したように蝉が鳴き始めました。今日も暑くなりそうです。
そこへ一匹のアシナガバチがやってきて、父の卒塔婆にとまりました。私は、「巣を作られたら困るな」と思い、お墓を一回りしてみました。巣はありませんでした。でも、アシナガバチは父の卒塔婆の上をゆっくりと這い回り、しきりと顎を動かしています。
ハチは、卒塔婆の表面を顎でこそげ取って繊維を集めているようです。改めて卒塔婆を見ると、部分的に表面が毛羽立ったようになっていて、父の戒名も削れたようになっていました。
「巣を作るために、繊維を取りに来ていたのか」
アシナガバチが飛んでいきます。
「あの先に、父の戒名が編みこまれたアシナガバチの巣があるんだ…」
思い出したように蝉が鳴き始めました。今日も暑くなりそうです。
その他
公開:19/08/04 10:07
宇祖田都子の話
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
ログインするとコメントを投稿できます