夫婦
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夫はせっかちな人だった。
反対に私はグズで、いつも夫の機嫌を損ねていた。
「ほら、行くぞ!」
出かける前から苛々している夫に、やっぱりモタモタする私。
忘れ物はないかしら。戸締りは、火の元は。鍵はちゃんと持ったかしら。ハンカチは。
「もういい! 俺は先に行くぞ!」
待ってと言う間もなく、夫は私を置いて行ってしまった。
そして私は病院のベッドで目を覚まし、亡くなった夫が迎えに来ていたのだと知った。
「お父さん、相変わらずだったわ。せっかちで怒りんぼ」
少し落ち着いてから、私は娘にその話をした。
「おかげでこうしていられるわけだけど」
娘はそれを聞いて笑った。
「お父さんらしい。でも、今回はワザとだったんじゃない? だって今までどんなに怒っても、お母さんを置いていくなんてなかったじゃない」
そう。そういう人だった。
だからこそ、一緒に連れて行って欲しかった。
反対に私はグズで、いつも夫の機嫌を損ねていた。
「ほら、行くぞ!」
出かける前から苛々している夫に、やっぱりモタモタする私。
忘れ物はないかしら。戸締りは、火の元は。鍵はちゃんと持ったかしら。ハンカチは。
「もういい! 俺は先に行くぞ!」
待ってと言う間もなく、夫は私を置いて行ってしまった。
そして私は病院のベッドで目を覚まし、亡くなった夫が迎えに来ていたのだと知った。
「お父さん、相変わらずだったわ。せっかちで怒りんぼ」
少し落ち着いてから、私は娘にその話をした。
「おかげでこうしていられるわけだけど」
娘はそれを聞いて笑った。
「お父さんらしい。でも、今回はワザとだったんじゃない? だって今までどんなに怒っても、お母さんを置いていくなんてなかったじゃない」
そう。そういう人だった。
だからこそ、一緒に連れて行って欲しかった。
ファンタジー
公開:19/08/05 10:27
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