祭りの後で

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たくさんの打ち上げ花火。光は散って、音も遠くに流れて、漂っていた煙の香りも風が運んでしまった。それでも彼は浴衣のままその場を離れなかった。また、光が上がるのを待っている。
僕は夏の湿った空を指差して、すっと細い月を書いた。西の空に細い赤い一筆を。
彼がにっこり笑ったから、僕は彼を抱き上げた。僕の腕の中で彼は月に手を伸ばして、覚えたばかりの言葉で「たーまやー」と小さく呼びかけた。
その他
公開:19/08/04 21:20
更新:19/08/04 22:08

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