とりかへばやを取り換える

「ずっと好きだった、もう抑えきれない」（超棒読み）
「やめて下さい中将。私には妻も子も」（眉間に皺）
「お前の子じゃない。だってお前は」（吐きそう）
「まさか貴方、私の秘密を」（マジ嫌悪）
「そんなわけで（中略）今日こそ俺のものに」（早口）

二人とももっと真剣に。と言いたいが、既に衣装の下は蹴りと拳の応酬。渋々カメラを止める。
「配役ミス。何で女役が、俺よりでかい野郎なんだよ」
「不本意ながら同意です。設定に無理があるかと」
秋の文化祭。隣の現代映像文化研究部と、うちの古典文学研究会で、ミニ映画を製作する事になった。かの名作『とりかへばや物語』を、我が校の二大美少年、通称『源氏中将』が演じるとあって、チケットは即日完売である。
「会長が男装で相手なら、俺、本気出すけど？」
「却下！それくらいなら、僕が拷問に耐えます」
二人とも、実に判りやすい。
ちなみにメイキングと写真は、物販の目玉だ。