酔芙蓉

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酔芙蓉(すいふよう)という花がある。
ムクゲの仲間で、朝に咲いた白い花が、時間が経つにつれて桃色に変化する様を、酔った顔に見立てたものだ。
さて、ここで疑問が生じた。
酔芙蓉を実際に『酔わせた』場合、花の色や咲き方はどうなるか?
なぜそんな事を考えたかと言えば、息子の夏休みの自由研究である。
当節は採点も厳しく、それなりに『研究』の体裁を取らねばならない。2鉢の酔芙蓉に、片方は水、片方は水とエタノールを滴下し、徐々に濃度を上げる。

……重量対比10%辺りで、顕著な変化が現れた。
明らかにエタノール入りの方が、花の色が赤い。おまけに、夕方には萎むはずが、ますます元気に満開だ。花びらも酒臭く、完全に出来上がっている。片付けようとしても、枝が手を離さない。悪酔いの絡み酒だ。
どうにか宥めすかし、灯りを消して眠らせた。

翌日。
萎んだ花も、本体も、蒼くなってしょげていた。
二日酔いらしい……。
ファンタジー
公開:19/08/02 22:36
良い子はマネしないで下さい。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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