とれるさかな

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 カレーの香りが鼻腔をくすぐる。それは、香ばしいうえにスパイシーで食欲をそそる。同時に生臭い。
 便所の蓋の魚に唆されて休んでからというもの、私の人生は右肩上がりというべき改善を見せている。休日出勤を命じられることはなくなり、残業は未だあるが、そういう日には頑張ったご褒美であるとばかりに帰路、ちょうど座席が空く。
 いざ帰宅すると、気温も湿度も高い盛りだ。丸一日空気の籠りきった家はサウナに近い状態で、必然的に、空気と一緒に丸一日蒸されきっていた魚の生臭さもまた盛りだ。ぶわ、と涼しい廊下に流れ出す空気と一緒に臭いに包まれ胃液を味わう。
 「ちょっと、やっぱり本当に」
 魚はやはり便所の蓋の上、どろりと白い目を濁らせている。
 「まあ、死んでしまったよね。主夫というか」
 試しに抱え上げてみると、意外と軽い。身もしっかりしていた。 「夕飯は作るよ」
 魚は、そう言ってカレーを作り始めたわけだ。
SF
公開:19/08/02 22:26

魚倉温( 五分前のあっち )

いつも心におさかなを。

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