星を磨く人

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その人はランプを磨いていた。机の上には様々な形のランプや照明器具が静かに明滅していた。
「これは炭鉱夫のランタンだよ。ガス事故が起きて、まだ中にいたのに入口が封鎖されて死んでしまった」
私はヘルメットを拾った。額のライトがぼんやり光った。
「それは救助隊員のもの。トンネル崩落の救助中に死んだ」
それから、ガラスの割れた手提げのカンテラ。
「夜戦に駆り出された兵隊だよ。視界が悪くてね。手元を照らした時に狙撃された」
語られる度に、ランプやカンテラがモールス信号を明滅させる。語り人が応えるように口を開いた。
「みんな誰かのために、困難に立ち向かった人たちさ。恐ろしい暗闇を、光とともに突き進んだ先人たちだよ」
先人たちの魂がランプに、電灯に、カンテラに宿って夜空に灯る。ここにあるのは、みんな星だ。
「罪人は、星を磨くことで許される」
私の罪は命を粗末にしたこと。星々の輝きに、圧倒されて泣いた。
ファンタジー
公開:19/08/02 23:58
更新:19/08/03 00:09
夕張 石炭博物館

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
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写真は全て自前でやっています(笑)

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