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扉を開くと、組織培養によって増やされた植物体が棚一面に並んでいる。
「や、お疲れ」
声を掛けてきたのは、友人のS。培地に植物のりん片を植えている。
組織培養とは、植物体の一部から、その個体をまるまる再生させる技術のことだ。
培地とは、培養する植物体に栄養を供給するもので、僕らは寒天で固められた培地を使っている。
「近頃、夜遅くに現れる不審者の話、知ってる?」
作業の準備中に、Sが訊いてきた。
あぁ。
「夜十二時になると、全く同じ格好をした男たちが複数の場所で同時に現れるっていうやつ?」
僕は答える。右手の瓶の中には、今から培養する対象が入っている。
──僕の爪だ。
「そう。フードで顔は見えないらしいけど、みんな同じ背丈らしい。聞いた話では、大体お前と同じ身長だったはず」
「うわ、まじか」
僕は口元の笑みを隠して、培地に爪を植える。
「怖いな」
何も知らない、ということが。
「や、お疲れ」
声を掛けてきたのは、友人のS。培地に植物のりん片を植えている。
組織培養とは、植物体の一部から、その個体をまるまる再生させる技術のことだ。
培地とは、培養する植物体に栄養を供給するもので、僕らは寒天で固められた培地を使っている。
「近頃、夜遅くに現れる不審者の話、知ってる?」
作業の準備中に、Sが訊いてきた。
あぁ。
「夜十二時になると、全く同じ格好をした男たちが複数の場所で同時に現れるっていうやつ?」
僕は答える。右手の瓶の中には、今から培養する対象が入っている。
──僕の爪だ。
「そう。フードで顔は見えないらしいけど、みんな同じ背丈らしい。聞いた話では、大体お前と同じ身長だったはず」
「うわ、まじか」
僕は口元の笑みを隠して、培地に爪を植える。
「怖いな」
何も知らない、ということが。
ホラー
公開:19/07/31 21:26
更新:19/08/27 22:04
更新:19/08/27 22:04
#扉を開くと
たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!
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