尻尾のない人々

　猫は尻尾で会話するというが、人は目が口ほどに語るという。
　人の目を見て話せという人もいるが、それは信頼の証明であると同時に強者が支配体制の構築に使う手法でもある。

　私は人の目を見て話すのが嫌いだ。目を見ろという人はどこか高圧的で、「話を聞いてる風でいて全く聞き入れない」人だと思うからだ。頑固な親、熱血教師、不良、尊大な上司、無機質な警官、政治家といった人ほど目を合わせたがる。

　近頃は詐欺にかかる人の多い社会だ。連日どこかの詐欺事件が報道される。目を合わせて言葉を聞く人が多いからだろう。詐欺師も本気で騙す時は相手の目を見る。
　詐欺師の話は嘘でしかない。それでも聴いて判断する煩わしさから逃げて、演技の雰囲気を聞かされて目を見てしまえば、詐欺師でも信じる切欠になってしまう。
　人の目を見るな。声を聞かず、内容を聴いて疑え。
「親にはそう強く念押ししたんですが、まさか自分が… 」