書中見舞い

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「はい、ショチューミマイ」
旦那がベッドへ運んだ、かもめーるの束。
32枚。全員揃ってる事を確認する。去年は立秋どころか、新学期まで引っ張ったけど、みんな成長したな。これもあたしの指導の賜物?軽く胸を張ったら、頭を小突かれた。
「一通り読んだら寄越して。地味に暇食うから」
「ご苦労さん。悪いね~、うちの子らの分まで」
あたしと旦那は、同じ学校で教師やってる。夏休みの宿題の一つ、先生への暑中見舞い。そして、もらったらお返しするのが先生の宿題。担任クラス分、残暑見舞いを出さなきゃならない。今年はあたしの分も旦那が代筆で、合計64枚。結構な負担だ。
「悪いと思うなら、今は安静に努める事」
相変わらず『先生』だ。いわゆる良い男じゃないけど、最高に善い奴。
「ふふ。『書中見舞い』だって」
「意味は合ってるだろ」
さすがあたしの旦那で、あたしの生徒達。
文面には示し合わせた様に、別の鳥が羽ばたいてた。
ミステリー・推理
公開:19/08/01 22:18

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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