真っ白な人

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綺麗な人がいる。ふと視線を上げれば、そこには真っ白な髪に真っ白な肌に真っ白な服の真っ白な人がいた。
驚いて言葉を失っていると、その真っ白な人は神様も恋に落ちるような笑顔で微笑む。
ひとりでいる僕のことが気になって、話しかけてくれたらしい。僕はやっぱり驚いたままで、緊張して上手く話すことができなかった。
「あの、とても」
とても綺麗ですね。と言いたかったのだ。けれど次に出てきた言葉は違うもの。
「し、白いですね」
あれ、そういえばこの部屋も凄く白い。というか何もない。そもそも僕は何者だろうか。
自分の手のひらを見つめる。けれど真っ白だ。服をつまむ。真っ白だ。髪も真っ白だ。そこで漸く、気がついた。白いのはこの人じゃない。この世界だ。
真っ白な人は、少し寂しそうな顔で笑った。
その他
公開:19/08/01 20:51

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