第5話 会いに行く
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久し振りに鏡を見た。顔は皺だらけだが、白髪はさっぱりと刈り込んで髭を整えたし、スーツも皺一つ無い。
駅前の花屋で受け取った深紅のバラはちょうど百本。
もういい年齢。抱えて移動などはとてもできないので、花屋の前でタクシーを拾った。
「今日は妻の誕生日でね。天国に居る妻に、生前渡せなかったこのバラを届けたいんだ。墓参りに深紅のバラだなんて、おかしいだろう。近所で悪いんだが、頼むよ」
運転手はクラクションを鳴らし、タクシーを発進させた。
「着きましたよ」
どうやら居眠りをしてしまったようだ。
車窓に目を遣ると、そこには寺ではなく、公園があった。
私が妻にプロポーズした、あの小高い丘にある公園だ。そしてベンチに座るのは。あれは。まさか。
「お代は結構ですよ」
私はタクシーのドアを開け、妻に向かって駆け出した。
駅前の花屋で受け取った深紅のバラはちょうど百本。
もういい年齢。抱えて移動などはとてもできないので、花屋の前でタクシーを拾った。
「今日は妻の誕生日でね。天国に居る妻に、生前渡せなかったこのバラを届けたいんだ。墓参りに深紅のバラだなんて、おかしいだろう。近所で悪いんだが、頼むよ」
運転手はクラクションを鳴らし、タクシーを発進させた。
「着きましたよ」
どうやら居眠りをしてしまったようだ。
車窓に目を遣ると、そこには寺ではなく、公園があった。
私が妻にプロポーズした、あの小高い丘にある公園だ。そしてベンチに座るのは。あれは。まさか。
「お代は結構ですよ」
私はタクシーのドアを開け、妻に向かって駆け出した。
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公開:19/07/30 22:00
紺碧タクシー
登場することが趣味です。
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