第2話 此処から見える場所だけど

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少女が夜道を歩いていた。
齢は高校生くらいであろうか。暗闇でもよくわかる、美しい白い肌をしていた。
空は今にも泣き出しそうな濃い黒雲に覆われて、月の無い暗い夜であった。
少女は途方に暮れているようにも、暇を持て余しているようにも、それでいて少し急いでいるようにも見えた。
やがて少女はとある寂れた駅にたどり着いた。
終電や終バスの時間はもう過ぎており、少女はタクシー乗り場に並んだ。
どこからともなくタクシーが現れ、少女を乗せて走り去って行った。

翌日、見事な満月の写真が話題になった。
話題になったのは、写真の美しさでも、突然雲が晴れたことでもなく、美しい満月を背に空を飛ぶ、タクシーのようなものが写っていたからであった。
とある十五夜のことであった。
ファンタジー
公開:19/07/30 20:30
紺碧タクシー

TAMAUSA825( 東京と神奈川 )

登場することが趣味です。

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