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何か変だ
いつもと違う
そうか、心臓が動いていないんだ
でもどこも痛くない
私は死んだのかな
するとここはどこなのだろう
真っ白な地面だけの何もない世界
遥か遠くで何かが光った
私は呼ばれた気がして光に向かって歩き出した
光は夜空の星のようにちらちらと瞬いていた
どれだけ歩いても息は切れなかった
そもそも歩いていたのか、飛んでいたのかもわからなかった
やがて光の元にたどり着いた
掌ほどの大きさの丸い鏡があった
鏡を覗くとベッドで眠る私が映っていた
病室らしき部屋には両親がいた
心配してる
早く戻らなきゃ
指先で鏡に触れると冷たい鏡面に押し返された
この鏡を割ればあっちに行ける
待ってて
今行くからね
私はありったけの願いを込めて鏡を殴った
紙を破いたように鏡に穴が開いた
びゅううと私の意識は私の身体に吸い込まれた
ドクリと心臓が跳ねた
ゆっくり目を開けると両親の姿が見えた


「ただいま」
ファンタジー
公開:19/07/30 07:52

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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