引きずり込む

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ソファ下の闇から紙が這い出ているのを見つけたマサトは、その紙を引きずりだした。一枚の黄ばんだ原稿用紙であった。それは白紙ではなかった。マサトは400個のマス目に押し込められた文字を追った。
「これは俺の文字ではない。一体誰がこれを書いたのだ」
マサトは呆然とした。400字以内の小説が存在するとは。その短さのくせして読者を物語に引きずり込む。これはえらいもんに出会ってしまったぞ、とマサトはひとり唸った。
興奮したマサトは原稿用紙を買ってきて、早速机に一枚広げた。手汗で原稿用紙をふにゃふにゃにさせながら、書いては消し、消しては消しを繰り返し、ついには白紙に逆戻り。まったく筆の進まないマサトはふと思いついた。

ソファだ。
ソファの下に、あの小説を書いた奴がいるはずだ。そいつに話を聞こう。



ほこりの舞わぬ部屋に佇むソファの下に、原稿用紙が一枚。
こうして新たな物語がまた生まれたのであった。
その他
公開:19/07/30 01:14

上北 うてな

行き場を失い、メモ帳に彷徨うネタ達をここで消化&昇華させてます。

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