麦わら帽子

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ビューと風が吹き抜けた。
と同時に、私の麦わら帽子が青空へ舞って飛んでいく。
「待って!」
私は小さく叫んでそれを追った。
何かの気流にうまく乗ったのか、麦わら帽子は遠のくばかり。
私は無我夢中で走った。
友達であろう男の子が私を呼ぶ声や、車のクラクションの鳴り響く音が聞こえたが、そんなものはお構いなし。
私は風を切って走った。
もう少しで手が届くと思った瞬間、風が止み、麦わら帽子は目の前に落ちた。
それを拾い上げ周りを見回した。
気がついたら異世界に入り込んでいた。
ということは当然なく、よく来る隣町の公園の近くだった。
「今日は私の勝ちね」
私は麦わら帽子をかぶりながら言った。
赤く染まった空を背に、お腹を鳴らしながら家へと歩いた。
その他
公開:19/07/30 20:55

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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