武者行列の夕べ
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横断歩道で、市女笠が萌黄の袿を振った。
枲の垂衣から覗く笑顔は白い。鉄漿は既婚の習俗で、十代の少女には早いだろう。運転中なのを忘れ、つい振り返しそうになった。
道路に並ぶ『交通安全』の幟に混じり、『武者行列注意』の文字。登校日帰りのランドセルと、浴衣に草鞋がすれ違う。校庭に響くお囃子に、昔練習した音頭が過ぎる。ぴぃひょろ、とんとと、たたたん、たん。この先何だっけ?もう踊れない事に、少し切なくなる。
「佐々さん!馬は車両だから、歩道入れないで」
青シャツの巡査が騎馬武者に注意する。月代を掻いて謝るのは、本日の主役、佐々成政公だ。気温30℃越えに、大鎧はきつい。頭が下がる。
「お館様、兜被って!行列始まるっすよ」
「む、大将首」
足軽が槍に兜を引っ掛け馳せ参じる。巡査は警棒を太刀に見立て、抜刀の構え。
どん!どどん!
花火と陣太鼓の連撃。
法螺貝が吹けば、年に一度、戦国の夏祭りが幕を開ける。
枲の垂衣から覗く笑顔は白い。鉄漿は既婚の習俗で、十代の少女には早いだろう。運転中なのを忘れ、つい振り返しそうになった。
道路に並ぶ『交通安全』の幟に混じり、『武者行列注意』の文字。登校日帰りのランドセルと、浴衣に草鞋がすれ違う。校庭に響くお囃子に、昔練習した音頭が過ぎる。ぴぃひょろ、とんとと、たたたん、たん。この先何だっけ?もう踊れない事に、少し切なくなる。
「佐々さん!馬は車両だから、歩道入れないで」
青シャツの巡査が騎馬武者に注意する。月代を掻いて謝るのは、本日の主役、佐々成政公だ。気温30℃越えに、大鎧はきつい。頭が下がる。
「お館様、兜被って!行列始まるっすよ」
「む、大将首」
足軽が槍に兜を引っ掛け馳せ参じる。巡査は警棒を太刀に見立て、抜刀の構え。
どん!どどん!
花火と陣太鼓の連撃。
法螺貝が吹けば、年に一度、戦国の夏祭りが幕を開ける。
その他
公開:19/07/28 20:59
更新:19/07/28 22:52
更新:19/07/28 22:52
実在お祭りリポート
富山
漢字の読み:袿(うちき)
枲の垂衣(むしのたれぎぬ)
鉄漿(おはぐろ)
幟(のぼり)お囃子(おはやし)
月代(さかやき)
鎧(よろい)
法螺貝(ほらがい)
読み難くて済みません(>_<)
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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