びっくり箱

「貴方に最低の１日が訪れた時、このびっくり箱を開けないさい」
私は幼い頃、母にそう教えられた。
子供の好奇心とは恐ろしいものだ。そんな事を言われるとすぐに開けたくなってくる。
幼かった私は母に黙って、こっそりとびっくり箱を開けた。
すると中から恐ろしい怪物が現れ、私を飲み込んでしまった。

目が覚めた。何だ夢か…
念のため、こっそりとびっくり箱を確認してみた。
箱の中には何も入っておらず、私は拍子抜けした。

数年後、私はとても悲しいことに見舞われた。今日は人生で最低の１日だ。
落ち込む私に母は箱を差し出した。
「今こそ、このびっくり箱を開けなさい」
私は言われるまま箱を開けた。びっくり箱の中には何も入っていない。
「貴方…もしかして、前にこの箱を開けたことがあるの！？」
頷いた私に母はため息を吐いた。
「このびっくり箱…人生で１度だけ、過去をやり直すことが出来たのに…」
私はまた泣いた…