事前体験学習

何もいいことのない人生だった。悲観した僕は、屋上から飛び降りた。

脳裏に浮かぶ幼い頃の僕。続いて入学式、修学旅行…おぉ、これが走馬灯か…。

数々の思い出とともに、両親、友達…たくさんの人の顔が浮かんでは消える。

やっぱり、早まったかな？もう少し生きてみても…。

すると、いきなり走馬灯にテロップが出た。

『※この物語はフィクションです』

…えっ？

困惑の中、衝撃とともに僕の体は地面に打ちつけられ…ない。視界に光が射し、何か柔らかいものに受け止められた。

…生きてる？…よかった！

次々押し寄せる出来事と感情を整理できぬまま、思わず溢れ出す涙と叫び。どこからか声が聞こえた。

「おめでとう！元気な男の子ですよ！」



「生まれる直前に偽の人生を擬似体験…。効果あるんですか、神様？」
「わからんが試してみるしかなかろう。最近の自殺率の増加は、冥界の混雑に拍車をかけているからな」