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居間に置いてあったダンボール箱が動いているらしい。ビール片手にナイターを見ていると、ザリザリという音が背後から聞こえる。その都度振り返ると、通販会社のダンボール箱の位置が変わっている。「だるまさんが転んだ」みたいだなと思う。多分、猫だ。いつもならソファーにいる私の膝に鼻先をこすり付けてくる猫が、今夜は来ない。箱の好きなネコが中に入って遊んでいるのだろうと、ナイターを見ている。
ザリ、ザリ。という音がする。私は反射的にダンボールを見る。カステラの箱くらいのサイズの小さな箱。妻が化粧品か何かを買ったのだろう。ザリ。ザリザリ。今度は、動いているところを見ることができた。箱は、居間から玄関ホールへ出る扉へと向かっているようだった。その扉は閉まっている。
と、その扉を妻が開けた。顔をぬっと出して、「先に寝るね」と言って閉める。猫を抱いていた。
ダンボール箱は、なおもザリザリと移動している。
ザリ、ザリ。という音がする。私は反射的にダンボールを見る。カステラの箱くらいのサイズの小さな箱。妻が化粧品か何かを買ったのだろう。ザリ。ザリザリ。今度は、動いているところを見ることができた。箱は、居間から玄関ホールへ出る扉へと向かっているようだった。その扉は閉まっている。
と、その扉を妻が開けた。顔をぬっと出して、「先に寝るね」と言って閉める。猫を抱いていた。
ダンボール箱は、なおもザリザリと移動している。
ホラー
公開:19/07/28 10:29
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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