素振りもいつか…
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午後9時。バットが空を切っている。
ブン!
見たわけじゃない。正確にはマンションの住人用の駐輪場あたりから、私が暮らしている3階の部屋まで、ブンという音が断続的に聞こえてくるだけ。
でも、どうしてだろう。確信がある。あれはバットだ。野球なんてろくに見たこともないくせに。中3、最後の大会、補欠…。
「お前なあ。3階まで聞こえるスイングなんてあるわけねえだろ。王貞治かっての」
電話口の彼氏が呆れる。いつも私の言うことを、まず馬鹿にする。本当かどうかなんて関係ない。だから私は反論する代わりに、はははと笑う。
ブン!
坊主頭、恋心、交わしてない約束…。素振りしてる時って球は見えてるんだろうか。見えてるなら、それでも当たらないのは悔しくないんだろうか。
「ねえ…」
言ったきり、私は黙った。聞こえるかな。午後11時のフルスイング。
ブン!
見たわけじゃない。正確にはマンションの住人用の駐輪場あたりから、私が暮らしている3階の部屋まで、ブンという音が断続的に聞こえてくるだけ。
でも、どうしてだろう。確信がある。あれはバットだ。野球なんてろくに見たこともないくせに。中3、最後の大会、補欠…。
「お前なあ。3階まで聞こえるスイングなんてあるわけねえだろ。王貞治かっての」
電話口の彼氏が呆れる。いつも私の言うことを、まず馬鹿にする。本当かどうかなんて関係ない。だから私は反論する代わりに、はははと笑う。
ブン!
坊主頭、恋心、交わしてない約束…。素振りしてる時って球は見えてるんだろうか。見えてるなら、それでも当たらないのは悔しくないんだろうか。
「ねえ…」
言ったきり、私は黙った。聞こえるかな。午後11時のフルスイング。
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公開:19/07/29 15:38
400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。
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