扉を開くと ・ 夏の温度

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扉を開くと、夏の日差しが目に刺さる。
眩しさと空気の温度に顔をしかめ、訪問者の影を探す。
「おはよう」
それは隣町に住む佐藤さんだった。
夏休みは昨日始まったばかり。一体どうしたのだろう。
挨拶を交わし、用件を訊く。
「これ、先生が配り忘れてたプリントなんだけど」
一枚の紙をくれる。
「あ。ありがとう」
何を話せば良いか分からないまま、受け取る。
彼女は何か考える素振りをして、
「じゃあね」と、帰ろうとした。
そのとき。
「あら、ユミちゃん。どうしたの?」
母さんがやって来て事情を訊く。
「遠いところありがとね。よかったら休んでく?冷たい麦茶にアイスもあるわよ」
彼女がこちらを見た。いいの?という顔。
僕は頷く。

「じゃあ、お言葉に甘えて」
少しはにかんで、玄関に入る。

「そうだユミちゃん、今度の日曜日にね……」
何を話しているんだろう。
玄関には、夏の始まりの温度が少し残っている。
青春
公開:19/07/29 10:37
更新:19/08/27 22:03
#扉を開くと

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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