ホームの蟬
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ミンミンと耳を刺す蝉時雨は周囲の雑音をかき消し、私は夏休みに叔父と過ごした日々を思い出していた。無口だけど、いたずら好きな叔父はゲームばかりしている私の背中に蟬を張り付けて、怖がる姿を赤ら顔で笑っていた。
そんな叔父の訃報を聞き、葬儀に向かうため新幹線のホームに立っていると、蟬が倒れてることに気づいた。
まだ生きてる。
拾い上げて周りを見渡すと、反対側のホームに蟬がいくつも貼り付いていた。まさかと思い下を覗くと、地中から無数の蟬の幼虫が這い出て、線路上に蠢めいていた。
『...黄...線...内...い』
蟬の声で断片的に消されたアナウンスに気づくと、鼻先をかすめて新幹線は到着した。幼虫はガサガサと乾いた音をたてて潰された。
自動扉が開く。
持っていた蟬が手の中ででジタバタしていたので、空に向かって蟬を離した。
「冷たっ!」
頬に残った涙の跡に、蟬はおしっこをかけて飛んでいった。
そんな叔父の訃報を聞き、葬儀に向かうため新幹線のホームに立っていると、蟬が倒れてることに気づいた。
まだ生きてる。
拾い上げて周りを見渡すと、反対側のホームに蟬がいくつも貼り付いていた。まさかと思い下を覗くと、地中から無数の蟬の幼虫が這い出て、線路上に蠢めいていた。
『...黄...線...内...い』
蟬の声で断片的に消されたアナウンスに気づくと、鼻先をかすめて新幹線は到着した。幼虫はガサガサと乾いた音をたてて潰された。
自動扉が開く。
持っていた蟬が手の中ででジタバタしていたので、空に向かって蟬を離した。
「冷たっ!」
頬に残った涙の跡に、蟬はおしっこをかけて飛んでいった。
ファンタジー
公開:19/07/26 16:58
更新:19/07/26 18:04
更新:19/07/26 18:04
マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。
100 サクラ
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