私と一万円

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祖父の家に行くと、いつも帰りにお小遣いとして一万円をもらっていた。小学生だった私には、一万円の価値が分からなかった。母が小学生には多すぎると言って、千円に替えてくれた。残りの九千円は貯金。
一万円を手渡してくれたのは、いつも祖母だった。祖父は毎日のように忙しく働いていた。祖父の家はリサイクル商店だ。ダンボールをトレーラーで潰したり、金属とガラスを分別したりしていた。祖父の手と顔は、いつも真っ黒だった。働いている姿は、生き生きとしていて、かっこ良かった。
私が修学旅行へ行く前日、祖母から「家に来てほしい」という連絡があった。行ってみると、作業場に祖父がいて、手招きをしている。何だろうと思い、祖父に近づくと、真っ黒な手で一万円を手渡してくれた。私は、びっくりした。「ありがとう」の声がうわずった。祖父は何も言わずに、仕事場に戻った。この日は、いつか恩返しをしようと決めた日だ。でも遅かった。
その他
公開:19/07/26 11:11

琴音

人間のキラキラとしたところ、弱さ、愚かさ、醜さ、温かさ、愛おしさ、優しさ、面白さ…

人間とは何かを追求して書きたいと思います。

稚拙な文章で読みにくいと思いますが、読んでいただけると、とても嬉しいです。

のろのろ投稿です。。。
 

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