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「親指と中指」
「……何?」
ベッドに仰向けたまま、気怠さが尾を引く声で、彼女が訊き返す。
「首の周径。両手の親指と中指繋げると、丁度だって」
シャワー待ちに仕入れたネタだ。あわよくばと目論まないでもなかったが、反応が鈍い。外したか。
「ん~、どうかな?」
もそもそ腕を伸ばし、彼女の手が輪っかを作る。
「大っきい。もっと……」
人差し指。輪っかが一回り縮む。台詞込みで猥褻に感じる。指が首に巻く。
「余裕。結構、首って細いね」
乗って来た、もう一息。
「片手の親指と中指なら、手首の周径」
「それも人差し指かも」
手首に食いこむ指。堪らなくなりメジャーで測る。15cm。実寸の細さにクる。足首は20cm。俺の手首と変わらない。
首――30cm。
「別な所も、測りたくない……?」
濡れそぼった声を吹き込まれながら、俺の頭では『5cm』が明滅していた。
脈動に添う様に、メジャーを握る手に力を込めた。
「……何?」
ベッドに仰向けたまま、気怠さが尾を引く声で、彼女が訊き返す。
「首の周径。両手の親指と中指繋げると、丁度だって」
シャワー待ちに仕入れたネタだ。あわよくばと目論まないでもなかったが、反応が鈍い。外したか。
「ん~、どうかな?」
もそもそ腕を伸ばし、彼女の手が輪っかを作る。
「大っきい。もっと……」
人差し指。輪っかが一回り縮む。台詞込みで猥褻に感じる。指が首に巻く。
「余裕。結構、首って細いね」
乗って来た、もう一息。
「片手の親指と中指なら、手首の周径」
「それも人差し指かも」
手首に食いこむ指。堪らなくなりメジャーで測る。15cm。実寸の細さにクる。足首は20cm。俺の手首と変わらない。
首――30cm。
「別な所も、測りたくない……?」
濡れそぼった声を吹き込まれながら、俺の頭では『5cm』が明滅していた。
脈動に添う様に、メジャーを握る手に力を込めた。
ホラー
公開:19/07/25 23:23
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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